特定非営利活動法人MeTHoD 設 立 趣 旨 書




 現在、精神障害者や心の病を持つ人々にとって、安心してくつろげる場所や、信頼して心を開ける他人はあまりにも不足しています。
 また、精神障害者や心の病を持つ人々に対して、それが誰でもなりうる病気であることや、外からはわかりにくい多くの困難を抱えて生活していることなど、社会の理解はまだまだ不充分です。
 さらに、精神障害者のための生活施設がすこしづつ作られている一方、それらの多くは2年又は3年というような固定した利用期限を設け、生活を充実させることやくつろげる場所を提供することではなく、一種の訓練の場という機能を重視する傾向のもとに運営されているようにおもわれます。
 そしてその訓練の場の目標は、固定された利用期間に代表されるように、画一的な目標に向けたものであるように感じられます。

しかし、精神障害者や心の病を持つ人々が必要としている生活の場は、必ずしも訓練の場ばかりではないのではないでしょうか。

また、彼らが目標とすべきものも、それにいたるために費やされる時間も、ひとりひとり違って良いのではないでしょうか。
言うまでもなく、精神障害者や心の病を持つ人が、福祉的な支援を受けることなく独り暮らしをできるようになることも、一般の企業などで健常者と何ら変わらずに働けるようになることはすばらしい目標であり、ひとつの理想であるかもしれません。
しかし、目標とは本来、その人の障害や病気、さらにはその人の個性のうえに設定されるべきものではないでしょうか。


安心してくつろげる場所や、信頼して心を開ける他人の不足と、その人の障害や病気の内容から生まれる困難、その人の持つ個性とは無関係に社会から設定された目標という二つの要因が、精神障害者や心の病を持つ人々の日々の生活を豊かなものにしていくことを難しくし、更なる挫折感や疎外感を抱かせていることは、それらの人々の多くが「さみしい」「わかってもらえない」という「心の飢え」とも言えることを、特に強く訴えることからもうかがうことができます。
また、それは同時に社会への参加や復帰、病気や障害の克服への大きな困難となっています。また、社会の理解不足は精神障害者や心の病を持つ人々に対してのいわれのない偏見や不当な扱いを生むだけでなく、それまで健常であった人が心の病にかかったとき、自らの病を正しく理解し克服して行くことへの大きな障害にもなっています。
訓練や就労の場とは別に、くつろげ、安心でき、仲間のいる生活の場や、結果だけではなくそれに至る努力や困難を理解してくれ、そのひとりひとりの持つべき目標を一緒に考えてくれる身近な人間の存在が、誰にとっても必要なように、精神障害者や心の病を持つ人々にもぜひとも必要です。

 私たちは、精神障害者や心の病を持つ人々が、人としてひとりひとりにあった生活の場と信頼できる人間関係を持つことができ、さらにすべての人々が精神障害者や心の病を持つ人々を一人の人として正しく理解し、共に生活できる社会が実現されることを望んでいます。
 それは他の障害を持つ人にとっても、健常な人にとっても、より豊かな社会であると考えます。
 同時に生活のために施設を必要とする人にも、そこでの生活そのものを豊かにしていける環境があるべきだと考えます。

 私たちは1996年から精神障害者グループホームの運営を通じて、精神障害者への生活の支援をするとともに、安心なくつろげる場所の提供と信頼される人間関係を築くことに努めてきました。
 そのなかで、障害ではなくその人に接することの大切さと、その人のことを理解しようとしてくれる身近な存在を切望する彼らの気持ちを見、その訴えを感じてきました。
 私たちは永住するための施設ではありませんが、機械的に利用期限を固定することをせず、ひとりひとり、その人が必要とする期間グループホームを利用でき、そこでは生活に必要な手助けを受けられるだけでなく、 他の利用者や職員などとの交流のなかで、友人として気遣いあったり、ともに楽しんだりという体験をしながら、生活そのものを少しでも豊かに充実させていける環境を作るよう努力してきました。
 そして利用者自身の成長と、施設を退所したのちも続く人間関係に力を得て、私たちのグループホームで生活すべき期間を自ら終え、自身が求める次の生活の場へと進んで行ってくれる姿をみてきました。

 今後はその活動をさらにひろげ、くつろげる場所と信頼できる人間関係を支援するグループホームであることにとどまらず、そうした施設の必要性そのものを社会に広報し、私たちの理念を社会に問いかけながら、精神障害者や心の病を持つ人々とその家族などへの相談などの支援の提供、さらには健常な人々にむけて精神障害者や心の病を持つ人々への理解をうながす活動をしていきたいとおもいます。

 そのような広く社会の人々に向けた活動をすすめ、充実していくことをめざし、そのために社会からの信頼を得て、継続的に活動していくため特定非営利活動法人を設立します。